私が所有する賃貸マンションは、駅に近い街中にあるため、造りは居住用マンションなのですが、オフィスに利用してしている借家人も多いようです。この際思い切って1、2階を会社相手のオフィスマンションに改造しようかと考えています。
しかしそうなると、借家契約もその会社とすることになるのでしょうが、個人の借家人に貸す場合と、会社に貸す場合とでは、どんな点に注意したらよいでしょうか。
一口に会社と言っても、合名会社、合資会社、株式会社、有限会社とさまざまですし、その規模(例えば資本金など)も大小いろいろです。
そこで家主としては、「どんな会社が借家人になるのか?」をまず確かめる必要があります。このチェックのためには、相手方に会社の登記簿謄本を提示させることです。「私の会社はそんな登記をしておりません」となったら、それだけで相手はいわゆる<幽霊会社>と言われるもので、いくら立派な名刺をちらつかせても、法的には有効な借家契約もできない相手ですから、借家人として認めるわけにはいきません。
また、この登記簿謄本を提示させることで、会社を代表して借家契約を有効に成立させる会社代表者もわかりますからそんな点からも登記簿謄本の提示は必要です。その他、この登記簿謄本により、会社の種類、会社の規模なども用意に判明します。
例えば、家主さんの所へ現れ、借家契約の締結のため、家主側といろいろ接渉する者は、必ずしもその会社の代表者でなくとも、その接渉を任された者であれば、差し支えありません(例えば、会社の代表者=社長の息子で会社の総務を担当している等)。
しかし、話がまとまり、その会社が借主として借家契約に調印する場合は、原則として会社の代表者がこれをしなければならなくなります。したがって、借家契約の実際の調印の形は以下のようになります。
| 平成○年○月○日 東京都○区○○町○番地 家主 ○○ ○○ 印 東京都○区○○町○番地 借主 △△産業 株式会社 代表取締役社長 △△ △△ 印 |
ところでが、前述の例で、接渉にあたった息子が会社の専務取締役であった場合等には、息子が専務取締役として調印したとき、その息子に代表権が無かったとしても、会社の調印として有効とされます。(商法262条)
小さな会社の場合、夫が代表取締役社長、妻が専務取締役、息子が常務取締役、夫の弟が取締役副社長などという場合があります。こんなときは、妻、息子、弟に代表権がなくともその調印は会社を代表する有効なものとして扱われます。(商法同条)
借家人が個人の場合、その個人が死亡すると、借家権の相続の問題が起きます。しかし、借家人が会社の場合、代表者が死亡しても借家権の承継は当然起こりません。亡くなった人の代わりに誰かが代表者になれば、会社はそのまま存続しますから、借家人の承継の問題も起こらぬわけです。
借家人である会社が倒産したような場合、ここで対象としているような会社は、あず滞納家賃などの回収は不可能となるでしょう。家主としては、借家契約を解約して、借家人会社に立ち退いてもらうしかないでしょう。
会社相手に貸室するような場合、普通は会社の代表者を保証人に立てさせます。前述(4)のような危険があるからです。相手の会社が本稿で対象としているような子会社の場合はなおさらです。また、子会社でありながら、代表者が個人保証するのを拒否するようなら、もうそれだけで信用を疑ってよいかと思いますから、家主としては借家契約をやめにすべきです。
もっとも、代表の個人保証が無いのに、会社の債務である滞納家賃を代表者個人に請求できる場合があります。
それは<法人格否認の法理>と呼ばれる理屈に基づく場合です。これは、本問で問題にしているような子会社の多くに適応される理屈でもあるのです。例えば、本来個人経営でされるべき商売を、単に対税上の必要のみから会社組織にし、社長は夫、専務は妻、たった一人の社員が常務で、株主総会などはもとより、役員会も行わず外形上必要な書類のみを税理士あたりに形式上作成させ、とにかく実態はまったく会社の態をなしていないような会社の場合、この会社の債権者は、会社の法人格を否認して、会社の債務でも代表者個人に責任追及ができるというのが、この法人格否認の法則です。
したがって、借家人が上記のような会社だった場合、家主は会社の法人格を否認し、代表者個人に「滞納家賃を支払え」と請求できることになります。
もちろん、この場合、代表者が会社の保証人になっていないときでも、責任追及ができます。(6)IT産業との関連これからは、ますますIT産業は建ってんし、ビジネスのやり方もかわってくることでしょう。そうなれば、居住用マンションを借りて、居住を兼ねたビジネスも多くなるでしょう。結果、居住用マンションがオフィス、マンションを兼ね、借家人が会社となる機会も増えることでしょう。
これからの家主としては、今回述べたような程度の知識は勉強しておいてください。