数年ほど前から新築の家に入ると目がチカチカする、頭痛、喉の痛み、眩暈、吐き気、疲労感、湿疹などに襲われるシックハウス症候群(以下「シックハウス」)が深刻になっています。せっかく家を新築したり、新築のマンションだと喜んで入居したのに、このようなシックハウスの症状に日々悩まされる辛さというのは想像するにあまります。
シックハウスの主な原因は、一般的に建物の建築に使用される新建材、接着剤等に含まれるホルムアルデヒト、有機溶剤などであるといわれています。
シックハウスに悩む人々は、様々な会を作り、厚生労働省や国土交通省を訪問するなどし、この問題の改善を要求するなどしていますが、その矛先が建物の賃貸人に向き、裁判になってしまったというケースもあります。
事案は、建物賃借人が賃貸人に対し、賃借した建物内に異常な刺激臭が充満し、健康な生活がきないためにやむなく退去しなければならなくなったとして、貸主に債務不履行を理由に支払った賃料及び礼金、医療費、慰謝料の請求を求めたというものです。
この事案は、シックハウスを理由に賃貸借契約に基づく賃貸人の「通常の居住に適する状態での建物提供義務」の債務不履行を求めた全国的にも非常に珍しいケースでした。この訴えに対し、横浜地裁は結局
を理由に、原告である賃借人の訴えを退けました。(横浜地裁・平成10年2月25日判決)
「通常の居住に適する状態での建物提供義務」というのはあまり聞きなれない用語ですが、要は賃貸人の「貸す義務」(民法601条)を具体的にしたものであり、賃貸人には、賃貸目的物を普通の人が使えるような状態で貸す義務があるということを表現したものです。
上記判決では、結果的にこの意味での債務不履行はないと判断されましたが、これから先、この判決とは逆の結論の判決が出ないとも限りません。