トップページ > 旧コンテンツ >

貸室の無断貸与

質問

一月ほど前、若いOLのA子にマンションの一室を貸しました。
「こんな若いOLさんに、この広い貸室の家賃が払いきれるのかな?」と、少し不安になりましたが、立派な父親が保証になると言うので貸しました。ところが先日、用があってA子の部屋をのぞいたところ、A子は不在で、同年齢くらいの友人のB子が現れ、「家賃が一人では大変だと言うので、中の一部屋を私が借りて住むことになった」と言います。
家主の私に無断で、「勝手なことを!」と憤慨し、A子との貸室契約を解消して、A子に立ち退きを-迫ろうと考えていますが、これは可能でしょうか?

回答

(1)無断貸与の法的問題

民法第612条は、「賃借人ハ賃貸人ノ承諾アルニ非サレハ某権利ヲ譲渡シヌハ賃借物ヲ転貸スルコトヲ得ス賃借人カ前項ノ規定ニ反シ第三者ヲシテ賃借物ノ使用収益ヲ為サシメタルトキハ賃貸人ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得」と規定して、借家人が家主に無断で転貸借することを禁じ、これに違反した場合、家主は借家契約を解除できる旨規定しています。

従って、A子のしたことが、借室の無断転貸になるなら、家主はA子との借家契約を解除して、A子を立ち退かせることができます。

(2)無断貸与となるか?

本問では、A子がB子に貸したのは、借室の中の一部屋だけのようです。そこでまず、賃借物の一部の転貸でも、民法612条の無断転貸になるかが問題になります。裁判所は、かねてより、この点につき、「賃借物の一部たると全部たるとを問わない」と考えています。ただ、B子の使用が一室だけの間借りであったとしても、実際にはいろいろの形態が考えられますのでそれだけで無断貸与になるかとなると、問題があります。

一般的に言えば、間借人の使用、占有関係が借家人と独立したものであるかどうかが、重要な判断基準になると考えられています。例えば、B子が間借した一室は、扉にも鍵がかかり、A子もそこへは勝手に立ち入ることができず、その部屋でのB子の占有使用状況は、完全にA子と独立したものになっているとかの場合は、B子の間借は民法612条の転貸と言えるでしょう。

これに反し、B子がA子の住み込みのお手伝いであるとか、家族の一員であるとかの場合、たまたま空いている一室の使用を許されたとしても、B子の占有使用は、A子の占有の中に包含され、独立の占有を持たず、転借とかの立場にはなりません。間借人が、間借料を払っているとかは、転貸を推認させる一賃料にはなっても、それだけをもって直ちに「転貸だ」とはなりません。無料の間借人でも独立の占有関係を持つ場合があるからです。

ただ、間借りが一時的なものであるとか、使用部分が特定していないとか、間借が借家人の恩情とかによるような事情がある場合などは、概して、独立の専有が認められない場合が多いといえます。

(3)本問の場合

B子が借りたのは、A子の貸室の中の一部屋であったにせよ、その一部屋については、A子と独立して占有使用する状態にあったものと思われ、特にA子とB子とは、親族関係とか主従関係にもなく、かつ期間的にも「ほんの一時・・・」とかの制限もなく、またB子はその部屋の間借料としてA子に相当額の金員を支払っているようですから、いずれからするも、転貸借に該当することは明らかと思われます。

(4)借家契約の解除

賃借室の一部が無断転貸された場合でも、家主はそれを理由に、借家契約の全部を解除できるかについては学説も裁判例も等しくこれを認めています。これは当然と思われます。

無断転貸につき家主に契約解除権を認めたのは、借家人の背信性によるものですから、背信という点では、一部だろうが全部だろうが変わりがないからです。

また、本問のような場合、無断転貸は一部屋のみなのですから、その一部屋のみの契約解除ということも理屈としては考えられます。

しかし、実際問題として、そのような一部解除を認めても、その後の権利関係が複雑になるだけでなく、実益もありません。

従って、特段の事情のない限り、このような一部解除を認める必要もないものと考えます。

尚、例えば親戚から頼まれ、ほんの一時(例えば、息子の大学入試の期間だけとか)、間借りさせたような場合、その間借りが独立占有を持ち、外形上転貸借になるとしても、かかる場合、借家人には背信性が認められませんから、借家契約の解除は許されないものと考えます。

これに反し、高い権利金や敷金、家賃を取って第3者に間貸ししたような場合、もうそれだけで借家人の背信性は明らかですから、契約解除は可能とされます。

(5)最近の無断転貸

<恋愛の自由>が叫ばれ、男女交際も自由放任となった近頃のご時勢です。借家の無断転貸も、その形にかなりの変化が見られ出しています。例えば、若い娘さんが一人で借家しているとき、恋人である若い男を同居させた場合、またはこれと逆に、若い男が一人で借家しているところへ恋人の娘さんを同居させた場合、それが家主に無断だったら、家主は無断転貸を理由に契約解除できるでしょうか?

この場合のほとんどは、本問のように一部屋だけの間借りではなく、借室全体を二人で使用する形となります。

ところで、無断転貸となるには、前述の通り、転借人がその借家の居住につき独立の占有をした場合です。同居人が借家人の恋人とかの場合、その借家につき、恋人が借家人の占有に包含されて独自の占有は持たないのが普通です。従って、このような場合は無断転貸にはならず、契約解除の理由にもならないでしょう。

ところが、女性の借家人のところへ、恋人の男が同居し、男が夫のように振舞って独立の占有を始めた場合、女性の占有がその男の占有に包含されるといった事態も生じます。このような場合、借家人である女性は、借室全体を男に転貸したに等しく、それが家主に無断であれば、契約解除の理由にもなります。

最近の強い女性の場合、上記の逆、つまり男の借家人の所へ恋人の女性が同居して、女性が独立の占有を持った場合も同様です。特に、恋人関係が内縁関係に移行したような場合は、いずれか一方が独立の占有を持ち、他の占有はこれに包含されがちですから、無断転貸の問題に発展しかねません。

「お役立ちコラム」のトップへ戻る


Copyright (C)2002-2006 Seitoku Jyuhan Co.Ltd. All Right Reserved.