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借地上の自宅を妻名義のアパートに建て替えたい

相談

老妻にアパートを持たせたいのですが・・・かなり以前に、郊外の土地を借地として自宅を建て居住していました。この借地が広いので、定年退職を機に、自宅を取り壊してアパートに建て替え、老後の生活の安定を図ろうと考えています。

私たちには子供がおらず、私に万一のことがあると老妻一人が残されます。それで新たに建てるアパートは妻名義にしておいてやりたいと思いますが、いかがでしょうか。

回答:所有権を渡しても、妻が先に亡くなれば水の泡。建物だけでは意味がありません!

(1)借地権の継承

その土地を借りているのは、あなたですので、その土地の上にあなた名義のアパートを建てるのなら問題はありません。(もちろんその前に、借地の使用目的変更による地主からの承諾を取りつけておいた方が間違いがありません。また、借地権の対抗力を保つ為にいろいろ手順がありますが、これは後述します)

ところが、奥さん名義のアパートとなると、奥さんにはその借地を使用する権限がないので、地主から借地権の無断譲渡、無断転貸(あなたから奥さんへ)を理由に、あなたとの借地契約が解除されると、奥さんはそのアパートを取り壊して立ち退かざるを得なくなります。(民法612条)

従って、こんなことのないよう、事前に借地権の名義=借地人名義も、あなたから奥さんに変えておかねばなりません。このためには、地主になにがしかの名義変更料を払わなければならないことになりましょう。こうしておけば、以後奥さんは、その新築アパートの敷地に借地権を持つわけですから、堂々と本件借地を使用できることになります。

(2)自宅の登録名義の変更

ところが、借地権は奥さんに譲ったのに、アパートの建築が遅れたりしていると、あなた名義の自宅のその借地上に残されている状態になります。この場合、事情を承諾の地主さんが、まさか無断転貸とか無断譲渡とかで文句はつけないでしょうが、このままでは、奥さんが譲り受けた借地権に対抗権がない状態になります。

裁判所は、借地権に対抗力が認められる為には、借地上に借地権者名義の建物が登録されていることが必要と解していますので(借地借家法10条1項)、借地権者は奥さん、借地上の建物の登録名義は夫のあなたでは、その要件が満たされていないことになるからです。

従って、奥さんに借地権が移ったら、同時に自宅の登録名義も奥さんに変えた方が、間違いはないと思われます。そうしないと、借地権が奥さんに渡された後、自宅の登録名義があなたのままのとき、地主がその土地を第三者に売ったりした場合、奥さんは譲り受けた借地権をその第三者に主張=対抗できず、第三者から立ち退きを迫られたりすると、立ち退かなければならない結果になってしまいます。

(3)借地権の対抗力の保全

さて、土地の借地権名義も、自宅の登録名義も、奥さんに一体化されました。

建て替え中の対抗力は?

そこでいよいよ、自宅の取り壊しと、アパートの新築になるわけですが、ここでもアパートが完成してその登録がなされるまでの間、借地権の対抗力が保持されなければならないことは当然です。

ところが借地権に対抗力を持たせた登録ある自宅が取り壊されると、登録は無効となり、そのままでは借地権の対抗力がなくなるという問題が生じてきます。

そこで、この間、借地権に対抗力を持たせる方法として、新たに明規されたのが、借地借家法10条2項の規定です。この規定によりますと、本問の場合で言えば

  1. 自宅が取り壊された場合、借地権者である奥さんは、直ちに借地の見やすい場所に掲示をすること。
    この掲示の内容としては、自宅を特定するに足る事項、取り壊しのあった日、コレコレのアパートをここに建てますよ、という予告などが記載されます。
  2. 自宅を取り壊した日から2年以内にアパートを建てて、これを登録すること。
    上記の手順を踏まれれば、奥さんの借地権は、引き続き対抗力が保護されることになります。本問の場合、奥さんへの配慮は十分分かりますが、以上のように大変手間ひまがかかります。

手間をかけずに、家主を作る方法 「安い・巧い・賢い」方法は、遺言状を使うこと!   

要は、あなたの死亡後、奥さんへ問題なくアパートと借地が残されればよいわけでしょう。

それなら、お子さんもいないのだから、借地権も、アパートの名義もあなたのままとして計画を進め、あなたの名義となった新アパートとその敷地借地権を、一括して奥さんが相続するものとする旨の遺言書でも残せば足りるのではないかと思われますし、この方が無駄な手間ひまや費用を使わずに済みます。

さて、この場合、まずあなたの死亡の際に予想される相続人は、あなたのご両親と、あなたの兄弟姉妹です。(民法889条)

そして、兄弟姉妹には<遺留分>の権利がありませんから(民法1028条)、上記のような遺言としても、彼らの権利を害するということは有り得ません。従って、奥さんのほか、兄弟姉妹のみが相続人の場合は、上記のような遺言をしておけば、新築アパートとその敷地面積は問題なく奥さん一人が相続することになります。

あなたは既に高齢のご様子です。そうなると、あなたがこの先死亡するときは、なおのことご両親も亡くなられているかと思われます。その時は、当然ご両親は相続人から外されます。

もしあなたの死亡時、ご両親のどちらかでも生存していれば、この両親にも遺産相続権が発生します。そして、親御さんには遺留分の権利も生じます。

その場合、あなたの全遺産の半分が、この遺留分の対象となります。(民法1028条2号)

そして、この遺留分の中、親は1/3の取り分がありますから(民法900条2号)、結局、親には全遺産のうち 1/2×1/3=1/6は残してやらねばならぬことになります。(この場合、両親共に健在なら、この1/6を2人で平等に分けることになります)

従って、上記の遺言により、あなたの遺産中、アパートと借地権は奥さんが相続しますから、その他の遺産のうち、1/6は親御さんに相続させなければなりません。

このように、遺言という形で本問を処理すれば、

  1. 承諾料を払ってまで、奥さんに借地権譲渡の手続きをとったり、
  2. すぐ取り壊される自宅の名義を奥さんにするような手間ひま、費用が省け
  3. 上記の(1)(2)の贈与にかかる税金のムダがなくなり、
  4. 相続税なら、奥さんは色々な面での特典があり、本問の場合も、恐らくその額も心配するほどのものではないこと。
  5. それにあなたよりも先に奥さんが亡くなられるという事態もないわけではありませんから、その場合

上記(1)(2)の手間ひま、費用は全くの無駄になること。

このような意味から、本件の場合は、遺言による起訴のほうが適切と考えられます。 

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