マンション等の不動産の売買契約を締結する場合、通常、買主は手付金として売買価格の20%以内を差し入れます。
手付金には、契約成立の証としての「証約手付」、契約上の債務を履行しない場合に「違約罰」として没収される「違約手付」、当事者の一方が契約上の債務を履行しない場合に、損害賠償として手付を交付した者はそれを没収され、手付を収受した者はその倍額を償還する「損害賠償の予約としての手付」、そして契約当事者が契約の解除権を留保し、それを行使した場合の損害賠償として手付交付者は自己が差し入れた手付を放棄し、手付受領者はその倍額を返還する「解約手付」などがあります。
民法は、原則として契約に当たって授受される手付を解約手付の性質を有するものと定めています。(民法第557条第1項)
ですから、マンションの買主に、なんらかの事情が発生した場合、自己が差し入れた手付を放棄し、契約を解除することができます。もっとも、民法は、手付により解約ができる時期に制限を加えています。すなわち、当事者は「当事者の一方が契約の履行に着手するまで」に限って解除できることになっているのです。
例えば、売主側が買主側の意向を受け、登記手続きの準備をしたり、買主側が転居に向けて引越業者と契約したりした場合には、「当事者の一方が契約の履行に着手」したと言えますので、もはや解約手付を利用して契約を解除することはできないということになります。
民法が解約手付による時期をこのように制限した理由は、契約の履行に既に着手している当事者の具体的期待を保護しようという趣旨です。ですから、自分が契約に着手していても、相手方が契約に着手していない段階では、解約手付により解除できるということになります。
よって、「当事者一方」とは、「契約の相手方」という意味に解釈しなければなりません。もっとも、実際問題として、契約に着手したかどうかの判断が微妙はケースがあり、トラブルになることも少なくはなく、また、売主側がは専門の業者であることが一般的であることから、職業上業務の取り掛かりが早く、買主が解約手付によって契約を解除することができるのは、意外と少ないようにも思われます。
などがあります。